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 メタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)予防と治療

 
メタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)予防テキスト
 
5メタボリックシンドロームが目の敵にされるのはなぜ?
 
患者さん個人にとっても生命の危険・身体が不自由になるのは大変です。国や地方自治体・企業にとっても、その治療費や介護費を支払うことが重い負担になっています。治療費・介護費を全額自分で払える人は殆どいません。病気で働けなくなってしまうのも社会的には二重の損失です。
 
 
6症状が出てから治療するのではダメなの?
重い病気になってから治すのは、患者さんも治ったと実感できます。医療機関側でも治した実績が残ります。それで「めでたし、めでたし」でしょうか?

重い病気になれば命が助からない人もいます。重い後遺症が残る人も多いのです。発病する前と100%同じ状態に戻すのは、まず不可能です。ですから、これらの重い病気にかかる危険が高い「黄色信号」が点灯している段階でしっかりと治療して、重い病気にかからないようにする予防医学の考え方が必要です。

今、あなたにどれだけ危険が迫っているか、付録4(男性用)・付録5(女性用)を使って評価してみましょう。
 
 
7治療医学より予防医学は分かり難い
 
その通りです。なぜなら、予防医学で上手くいって何人かの人が重い病気にかからずに済んだとしても、予防医学によって誰が救われたのか、神仏にしか判らないからです。地域住民全体で統計調査を行って、初めて予防医学の効果が明らかになります。

国・地方自治体・企業は「こんなに治療医学と介護にお金がかかるなら、予防医学にもう少しお金をかけて、病気の源流・上流を絶った方が良いのではないか」と考え始めました。
健康体操
 
8メタボリックシンドロームの予防と治療は?
 
メタボリックシンドロームの原因は体質(遺伝)と生活習慣(環境)の2つの要因による内臓脂肪の蓄積だと考えられています。遺伝的な体質を変えるのは困難ですが、生活習慣は今日からでも変えることができます。

体質に関しては、メタボリックシンドロームの現在の診断基準や治療指針には、生活習慣病の家族歴は考慮されていません。

しかし、最新の研究結果からご親族に生活習慣病の患者さんがいる場合、特に複数の親族が生活習慣病を患っている場合は更に注意する必要があります。

生活習慣については、予防も治療も基本は同じです。食べ過ぎ・栄養バランスの悪い食事・お酒やジュースの飲み過ぎ・塩分の多い食事・運動不足などの生活習慣は改める必要があります。禁煙も必要です。

メタボリックシンドロームの予防・治療のための生活習慣の改善は、特別な治療ではありません。大昔から伝えられてきた、長寿のための健康法にほかなりません。全く健康な方がメタボリックシンドローム予防のための生活習慣改善を行っても問題はないのです。むしろ進んで生活習慣は改善すべきです。
 
 
9食事はどうすればよい?
 
栄養バランスを保ち、食べ過ぎないように、1日の食事全体のカロリーを抑えることが大切です。

1日に必要な食事の量は身長・年齢・活動量(仕事量)によって違います。標準的な摂取カロリーは以下の方法で算出します。
 
1日に必要な摂取カロリー算出方法
1) 身長(m) × 身長(m) × 22の計算式で標準体重(kg)を算出します。
2) 標準体重に重い肉体労働をする人は『35』
        普通の労働をする人『30』
        高齢者『25』をかけ算します。
 
 
資料7:肥満のシミュレーション

肥満のシミュレーション

 
肥満症の人は少なめの数値をかけ算しますが、無理なダイエットは長続きせず、体重が逆戻りして増えてしまう(リバウンド)の可能性もありますので注意が必要です。

無理なダイエットは脂肪のみならず、筋肉や骨も減ってしまいます。そして、リバウンドする時は内臓脂肪を含めた脂肪だけが増えてしまいます。従って、無理なダイエットと挫折(=リバウンド)を繰り返し、体重の変動幅が大きい人は死に易いという調査結果もあります。

栄養のバランスをとるための最も簡単な方法として「レイト・ザ・プレート(資料7)」が欧米では推奨されています。お皿に分割線を想定して、その中に納まるように食事を用意すればよいのです。
 
 
資料8:レイト・ザ・プレート

レイト・ザ・プレート

 
 
10食事療法について
 
メタボリックシンドロームのもとになる最も重要な危険因子「内臓脂肪」は、バランスの悪い食事や運動不足、ストレス、過度の飲酒など毎日の不規則な生活の積み重ねの結果です。まずは、生活習慣を見直し内臓脂肪を減らしましょう。
 
主食、主菜、副菜で4皿そろえましょう!
 
主食、主菜、副菜で4皿そろえましょう!
 
1朝食・昼食・夕食と1日3食きちんと摂る
 
悪い食習慣は、エネルギーの摂りすぎにつながり、肥満をまねきます。
食事内容はもちろんですが、食べ方や食べる環境にも気を配りましょう。
2副食(魚・肉・卵・豆腐など)は1食に1皿
 
ご飯より、おかずを食べ過ぎている人が多いもの。
副食は、1食1皿にして、種類を毎食変えましょう。
3野菜は毎食
 
生なら両手に1杯程度、加熱野菜なら片手山1杯程度にしましょう。
4主食は適量に(茶碗1~2杯)
 
主食を減らすと、おかずや間食が増えるので注意しましょう。
5油を使った料理は1日2品まで
 
油は非常に高カロリーです。油料理の数を抑えて、摂りすぎを防ぎます。
6低脂肪牛乳・果物は、決められた量を
 
低脂肪牛乳や果物のカロリーは決して低カロリーではありません。
食事と一緒に摂りましょう。
7嗜好品はルールを決める
 
アルコールや菓子で食事療法を乱してしまう人が少なくありません。
嗜好品は、摂取する量をきちんと決めましょう。
例えば、お菓子は月に2回・ビールは1日350ミリリットルを1缶までなどと
決めましょう。
 
 
10栄養指導はどれくらいの間隔で受ければよいのか?
 
悪い食習慣は長い年月をかけて身体に染みついています。短期間にどんな詳しく食事療法を学んでも、月日が経てば悪い食習慣がまた復活して、食事管理は緩みがちになります。欧米では2~3ヶ月に1回、食事の記録を管理栄養士にチェックしてもらうのがよいと云われています。

よくねらって大砲を撃っても、はるか遠くの目標へ到達するのは難しい。途中で何回も誘導するミサイルなら、はるか遠くの目標へ到達出来るのと同じです。

そして、悪い食習慣の背景には、悪い生活習慣があります。悪い生活習慣の例としては、「食事の時間が不規則」「夜たくさん食べる」「ドカ食いや欠食など食事の量が一定していない」「ながら食い」「空腹時に食材の買い物をする」「机の上にいつもお菓子が置いてある」「冷蔵庫にいつもジュースが置いてある」などです。悪い生活習慣の改善なくして、良い食習慣は身につきません。
 
 
10お酒の量は?
 
お酒にはいろいろな種類があります。それぞれのお酒を飲むときに用いられる器(うつわ)一杯に含まれるアルコール量はおおむね一定であるという考え方に基づき、一杯を「1ビバレッジ」として計算する方法があります。
この方法ですと男性は1日二杯、女性は1日一杯が適量となります。日本人の男性は1日一杯が適量かもしれません。また、毎日飲むのは良くありません。休肝日を設けるべきです。肝炎・肝硬変・膵炎・糖尿病性神経障害などの余病のある方は禁酒が必要になります。
休肝日
 
13運動は?
 
国としては、食事療法に加えて、運動量の増加によるメタボリックシンドロームの治療を第一に考えています。北欧では、運動療法の励行により境界型糖尿病から糖尿病への進行を約半分に減らしたという報告もあります。

目安として1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2回以上実施し、日常生活において歩行または同等の運動を1日1時間以上実施する必要があります。

運動療法として歩行を行う場合、成人男子で1日9200歩以上、成人女性で1日8300歩以上が目標となります。70歳以上の男性は1日6700歩以上、女性では1日5900歩以上が目標です。10分間の歩行が約1000歩になります。万歩計をつけて、1日の歩数を記録することをお奨めします。

但し、これまで運動不足だった方は徐々に運動量を増やすようにして下さい。余病を持っている方は運動が制限されることがあります。

普通の人が食べ過ぎを運動で解消するのは非常に困難です。また、運動の効果は数日でほとんどなくなります。十分な運動の効果を期待するなら、週二回以上の頻度で運動する必要があります。
 
 
資料9:歩くときのポイント
 
 
(1)
準備運動と整理運動には軽い体操やストレッチングを行いましょう
(2)
ウォーキングのポイント
 
1
頭の位置をムダに動かさない。
2
あごを引き、やや遠く(15m先)を見る。
3
自分の自然なリズムで呼吸をする。
4
肩は力を抜いてリラックスする。
5
肘はやや曲げて、腕を大きく振る。
6
腰の回転で歩幅を広くして歩く。
7
膝を伸ばして、かかとから着地する。
8
つま先で大地をしっかりキックする。
 
ウォーキングのポイント
 
14喫煙は?
 
百害あって一利なしです。喫煙は心筋梗塞などにつながる動脈硬化の危険因子であると同時に、肺癌や肺気腫などの危険因子でもあります。

最近は禁煙をし易くする方法として、ニコチンのパッチやチューインガムが発売されています。残念ながら保険が使えませんので自費になりますが、2~3万円の出費で禁煙に成功すれば、健康を手に入れると同時に数百万円以上節約になるかもしれません。
 
 
15体重を減らすペースは?
 
かなり不摂生していた人が正しい生活習慣を身につけると最初の1~2ヶ月で4kg以上体重が減ることもめずらしくありません。

しかし、最初の体重減少は身体の中の水が抜けたことによる減少が大きく関わっています。約半年後から数ヶ月間は体重が減らなくなるかもしれません。

新しい適切な食事量に合わせて身体の栄養代謝が調節される時期です。それでも辛抱強く、正しい生活習慣を守っていると1ヶ月に1~2kgずつ体重が減り始めます。これが「本当のダイエット」による体重減少です。

体重減少の目標値は、治療前の体重の5~10%減を第一目標として設定します。

1ヶ月に1~2kgずつ減量して、その目標値が達成でき、それを維持できれば、体重のコントロールに成功していると判定できます。

ダイエットで最も警戒しなければならないのは、「無理なダイエット」と「挫折によるリバウンド」であることを忘れないで下さい。
 
 
 
 
16体重や胴囲の改善が上手く行かないときは?
 
生活の記録ノートを作り、「いつ」「どんな状況下で」「何を食べたか」をできるだけ詳しく記録して下さい。記録をすることにより、無意識に食べ過ぎていたことが分かるかもしれません。

また、管理栄養士や糖尿病療養指導士といった専門家が、その記録を見れば、患者さん本人が気付かなかった「悪い生活習慣とその連鎖(因果関係)」が判明するかもしれません。

また、「一人だと、どうしても上手く出来ない」方は、家族や友人と一緒に治療に参加してみて下さい。一緒に治療に参加してくれる家族や友人がいない場合は病院主催の教室に参加するか、体重や胴囲の変化をグラフにして家の目立つ場所に張るのも効果的です。

インターネットの掲示板やホームページに『減量の記録』として、ハンドルネームを使って書き込むのも効果的です。

一人で孤独に減量に挑むよりも、誰かと一緒に、あるいは定期的に専門家のチェックを受けながら減量に挑んだほうが減量は成功しやすいようです。
 
 
付録7:身体状況・行動・食生活の記録  参照

 

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